突発性難聴とは?
突発性難聴とは、前触れもなく突然片耳の聴力が大きく低下または消失する病気です。
多くは朝起きた時や日中のふとした瞬間に気づき、「耳が詰まった感じ」「音がこもる」「人の声が聞こえにくい」といった感覚を伴います。
特に初期症状として多くの方が訴える「耳が詰まった感じ」についてですが、これは耳垢が原因ではないかと自己判断されることも少なくありません。
しかし、この耳の閉塞感は、突発性難聴の初期症状の一つである可能性も十分に考えられます。
特に、低音の聞き取りが悪くなるタイプの難聴では、最初に耳の詰まりを感じることが多いとされています。
最大の特徴は、急激な片側性の感音難聴であり、原因が特定できないケースが大半です。聴力低下に加えて、回転性のめまいや耳鳴りが伴うこともあり、日常生活に著しい支障を及ぼします。
実際、突発性難聴を発症した方の3割〜4割に回転性のめまいが現れるという報告もあります。
突発性難聴は発症からの時間が予後に大きく影響する疾患のため、「おかしい」と感じたら、迷わず耳鼻科を受診することが重要です。
特に、耳の詰まりを感じた際には、自己判断で放置したり、耳をいじったりせずに、早めに専門医の診察を受けることが大切です。
突発性難聴の原因
突発性難聴の原因は完全には解明されていませんが、以下のような仮説が有力です。
ウイルス感染
内耳の聴覚神経にウイルスが感染し、炎症を引き起こすという説です。
特に以下のウイルスが関連すると言われています
・単純ヘルペスウイルス
・帯状疱疹ウイルス
・ムンプスウイルス
・インフルエンザウイルス
これらのウイルスは一度体内に入ると神経に潜伏し、ストレスや免疫力の低下によって再活性化されることがあります。
血流障害
内耳の血管は非常に細いため、ストレスや自律神経の乱れによって血流が一時的に遮断されると、酸素や栄養が不足し、聴覚細胞が機能を失うと考えられています。
リスク要因としては以下が挙げられます
- 慢性的なストレス
- 睡眠不足
- 高血圧・糖尿病
- 喫煙や過度な飲酒
自己免疫異常
自己免疫反応によって内耳の細胞が攻撃されることで難聴が発生するという説です。
全身性エリテマトーデス(SLE)や関節リウマチなどの自己免疫疾患との関連性が指摘されています。
これらは単独で発症するとは限らず、複数の因子が重なって発症することもあります。
突発性難聴の症状
突発性難聴の症状は多岐にわたりますが、代表的なものは以下の通りです。
主な症状
- 片耳の急激な聴力低下(会話の声が聞こえないレベルから、軽い違和感まで幅広い)
- 耳鳴り(「キーン」「ジー」といった持続的な音)
- 耳の閉塞感(耳が詰まったような感覚)
- 音のゆがみ(テレビの音が不快に感じられるなど)
- 回転性のめまい
突発性難聴の約3割〜4割の方に回転性のめまいが現れます。
これは、周囲や自分自身がグルグル回っているように感じる症状で、内耳にある「平衡感覚を司る器官(前庭)」が障害されることで起こります。
>>回転性めまいについて詳しくはこちら
私が普段診療いたします患者さんにも、めまいが生じるケースや、逆にめまいが先行して聴力の低下に気づくケースもあります。また、同様に耳鳴りを伴うこともあります。
めまいに伴う日常の支障例
- 立っていられない、ふらついて転倒しそうになる
- 歩くときに真っすぐ進めない
- 吐き気や嘔吐を伴う
- 車や電車に乗るのが困難になる
めまいの強さや持続時間は人によって異なりますが、発作的に繰り返すこともあり、仕事や家庭生活への影響は深刻です。
めまいを伴う症状としては、メニエール病も知られています。
初期に耳の詰まりを感じ、その後めまいや聴力低下を繰り返すことがあるため、突発性難聴との鑑別が必要となる場合もあります。
突発性難聴の予防方法
突発性難聴そのものを完全に予防することは困難ですが、発症リスクを下げる生活習慣があります。
・ストレスマネジメント
・食生活の見直し
・適度な運動
・定期的な耳のチェック
まとめ
特に、耳鳴りや聞こえにくさ、耳の詰まりといった違和感を感じたら、自己判断せずに早めに耳鼻科を受診することが、重症化を防ぐ上で非常に重要です。

添田 一弘(当院院長)
日本めまい平衡医学会めまい相談医の資格を所有し、獨協医科大学で現在もめまいに関する学生講義も担当しております。宇都宮に根ざして50年以上の歴史がある耳鼻科医院にて、めまいに対してより専門性の高い診療を提供しております。
資格・所属学会
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定専門医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定補聴器相談医
日本めまい平衡医学会認定めまい相談医