「ある日突然、片方の耳だけ音がこもって聞こえる」「飛行機に乗ったときのように耳が圧迫されている感じがして、なんとなく不快」。このような経験はありませんか?数日続くと、「何かの病気かも?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
特に、30代〜50代の働き盛りの方は、ストレスや疲労が溜まりやすい時期です。耳が詰まった感じがすると、仕事や日常生活にも支障をきたします。「耳閉塞感」は一見すると軽微な症状に見えますが、安易に放置すると重大な疾患のサインであることもあります。
「もしかして耳垢が詰まっているだけ?」と感じる方もいるかもしれませんが、耳が詰まるという症状は、耳垢の詰まりだけが原因とは限りません。
実際、患者さんが耳の詰まりを訴える訴えの裏には、様々な原因の可能性があります 。
この記事では、耳閉塞とはどのような状態なのか、その背後にある様々な原因、そして重要な対処法について、専門家の視点も交えながら詳しく解説します。
耳閉塞とは?単なる「詰まり」ではない可能性も
「耳閉塞(じへいそく)」とは、文字通り耳が詰まったように感じる状態を指す言葉です 。しかし、単に「詰まっている」という感覚だけでなく、音が聞こえにくくなったり、自分の声がこもって聞こえたりするのも特徴です。
具体的な症状としては以下のようなものが挙げられます。
- 耳がボワっとした感じでこもる
- 自分の声が反響して聞こえる(自声強調)
- 周囲の音が聞こえづらくなる
- 耳が塞がったような圧迫感がある
- 音が片耳だけ聞き取りづらくなる
- 耳鳴りを感じる場合もある
- 軽いめまいを伴うこともある
これらの症状は、一時的なものであれば心配は少ないかもしれませんが、数日以上続く場合は注意が必要です。
見過ごせない!耳閉塞感の背後に潜む様々な原因
耳閉塞感の原因は多岐にわたります 。一般的に考えられやすい耳垢の詰まりの他に、以下のようなケースが代表的です。
- 耳垢(じこう)のつまり
耳垢が外耳道を塞ぐことで、音の伝わりが悪くなります。
- 急激な気圧の変化(飛行機や登山)
気圧の変化によって中耳の圧力が調整できず、耳が詰まったように感じることがあります。この場合は、一般的に耳抜きで改善が見込めます。
- 風邪や鼻炎などによる耳管機能の低下
鼻や喉の炎症が耳管の機能を低下させ、中耳の換気がうまくいかなくなることで耳閉塞感が生じます。
- ストレスや自律神経の乱れ
ストレスや自律神経の乱れが、耳の機能に影響を与えることもあります。
- 低音障害型感音難聴の初期症状
特定の音域、特に低い音が聞こえにくくなる病気の初期症状として、耳が詰まったように感じることがあります。
- 突発性難聴やメニエール病といった病気の初期症状
耳閉塞感は、突発性難聴やメニエール病といった、早期の治療が重要な病気の初期症状である可能性も指摘されています。
特にメニエール病の場合、耳閉塞感に続いてめまいが現れることがあります。
このように、耳の詰まりは、耳垢といった物理的な原因だけでなく、内耳や神経に関わる病気の初期症状である可能性も考慮に入れる必要があります。
患者さん自身は最初に耳の詰まりを感じた際、「耳垢が原因だろう」と考えがちですが、実際にはそうでない場合も多いのです 。
自分でできる対処法と、すぐに耳鼻科を受診すべき場合
耳閉塞を感じたとき、ご自身で試せる対処法もあります。
1.耳抜きをしてみる
飛行機に乗ったときのような気圧の変化による耳詰まりには有効です。鼻をつまんで口を閉じ、軽く息を耳に送るように試してみてください。ただし、無理に力を入れすぎないように注意しましょう。
2.湿度と温度を整える
乾燥した空気や冷えは耳の働きを鈍らせる原因になることがあります。加湿器などを使って部屋の湿度を保ち、身体を冷やさないように心がけましょう。
3.蒸しタオルで温める
耳の周囲を温めることで血流が良くなり、耳閉塞感が和らぐことがあります。蒸しタオルを使って10分ほど温めてみましょう 。
4.リラックスする
ストレスが原因で耳の働きが乱れることもあります。深呼吸をする、ゆっくりお風呂に入るなど、リラックスを心がけましょう。
5.鼻をかむ・洗浄する
風邪や鼻づまりがある場合、鼻の通りを良くすることで耳管の通りも改善されることがあります。優しく鼻をかんだり、市販の鼻うがい用キットで洗浄してみてください。ただし、強く鼻をかみすぎると鼓膜に負担がかかることがあるので注意が必要です。
しかし、これらの対処法を試しても症状が改善しない場合や、むしろ悪化している場合は、自己判断せずにすぐに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。特に次のような症状がある場合は、迷わず専門医の診察を受けてください。
- 耳が詰まった感じが数日以上続く
- 聞こえにくさが悪化している
- 耳鳴りが強くなってきた
- めまいやふらつきを感じる
- 片耳だけに症状が出ている
- 突然聞こえなくなった(突発性難聴の疑い)
耳閉塞感の原因が内耳や神経の異常であった場合、早期の治療が回復の鍵となります。
特に突発性難聴は、発症から48時間以内の治療開始が重要とされています。
また、耳垢の詰まりが原因であっても、自分で無理に取ろうとすると耳を傷つける恐れがあります。安全に除去してもらうためにも、医師の診察を受けるようにしましょう。
自己判断で耳をいじってしまい、かえって耳の中を傷つけて来院される患者さんも少なくありません 。
まとめ
耳が詰まった感じは、多くの人が経験する比較的よくある不快感ですが、その背後には様々な原因が潜んでいます。自己流の対処で済ませず、「少し変だな」と感じたら、早めに専門医である耳鼻咽喉科を受診するという選択肢を持つことが、ご自身の耳の健康を守る上で非常に大切です。日々の体調管理はもちろんのこと、小さな違和感を見逃さずに、適切な医療機関への相談を心がけてください。
回転性めまいは、多くの人が経験する不快な症状ですが、その原因は多岐にわたります。特定の症状や、めまいの発生に関連する特定の状況を理解することで、適切な診断と治療が可能になります。もしめまいが発生した場合、または上記のような深刻な症状が伴う場合は、迅速に医師の診察を受けることが重要です。

添田 一弘(当院院長)
日本めまい平衡医学会めまい相談医の資格を所有し、獨協医科大学で現在もめまいに関する学生講義も担当しております。宇都宮に根ざして50年以上の歴史がある耳鼻科医院にて、めまいに対してより専門性の高い診療を提供しております。
資格・所属学会
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定専門医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定補聴器相談医
日本めまい平衡医学会認定めまい相談医
主な現職
獨協医科大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科 非常勤講師