
今朝の突然のめまいと手のしびれ、まず何を確認すべきか
朝起きた瞬間に視界がぐるぐる回り、同時に片手の先がしびれる。「疲れが出ただけ」と思いたい一方で、脳の病気だったらどうしようという不安がよぎり、運転も受診の予約もためらってしまう——そんな場面は珍しくありません。この記事では、すぐに119番通報を検討したいサイン、耳が関わるめまいと脳が関わるめまいの違い、そして耳鼻いんこう科と脳神経外科のどちらへ先に相談するかの目安を整理します。判断に迷う段階では、自力で車を運転せず、まず相談窓口へ電話することが基本です。
この記事の要点まとめ
- 顔・腕・言葉の異常や片側のしびれがあれば、119番通報の検討が目安となります
- めまいが耳由来か脳由来かは、随伴症状の組み合わせが手がかりになります
- 症状に応じて耳鼻咽喉科・脳神経外科を使い分け、発症時刻など記録して受診すると相談がスムーズです
- 直ちに救急車(119番)を呼ぶべき緊急症状とFASTチェック
- めまいとしびれが同時に起きる主な原因と脳・耳の症状の違い
- 耳鼻咽喉科か脳神経外科か?症状に応じた受診先の判断基準
- 受診時に医師へ正しく状況を伝えるためのメモ作成手順
- 参考文献
直ちに救急車(119番)を呼ぶべき緊急症状とFASTチェック
めまいとしびれが重なったとき、真っ先に切り分けたいのは「脳の血管に関わる状態が疑われるかどうか」という点です。脳梗塞や脳出血では、発症からの時間経過が治療方針の選択に大きく関わるとされています。つまり、迷っている時間そのものが不利に働くこともあるわけです1。次の項目を、ご家族や同居の方と一緒に確かめてみてください。
脳梗塞を疑う「FAST」指標と片側のしびれ・麻痺のチェック
脳卒中の兆候を短時間で見極める目安として広く紹介されているのが「FAST」です1。
- 顔(Face):鏡の前で「イー」と歯を見せたとき、片側の口角だけが下がる、笑顔が左右で非対称になる
- 腕(Arm):両腕を前に伸ばして手のひらを上に向け、目を閉じて10秒。片方だけ下がる、力が入りにくい
- 言葉(Speech):短い文を声に出したとき、ろれつが回らない、言葉が出てこない、話が理解しにくい
- 時間(Time):ひとつでも当てはまれば、症状が始まった時刻を控え、直ちに119番通報を検討する
しびれについても、「体の片側だけ」に出ているかどうかが大きな手がかりになります。左手先だけ、左の手と足、あるいは口元と手が同時にしびれる——こうした分布は、脳側の関与を考える所見のひとつ。両手が対称にしびれる場合は別の要因も考えられますが、めまいを伴うなら自己判断で様子をみず、医療機関へご連絡ください。
救急搬送の検討が必要なめまいにともなう随伴症状
めまいそのものの強さより、何が一緒に起きているかが判断材料になります。次のような症状が重なるときは、急ぎの対応が必要と考えられます。
- 今までに経験のない激しい頭痛、後頭部や首の痛みが突然出た
- 物が二重に見える、視野の一部が欠ける
- ろれつが回らない、言葉が出にくい
- 支えがないとまっすぐ立てない・歩けない(座っているだけでも体が傾く)
- 手足に力が入らない、飲み込みにくい、意識がぼんやりする
耳が関わるめまいでは、強い回転感があっても手足の麻痺や言語の障害を通常は伴いません。めまいに「しびれ・麻痺・言葉の異常・激しい頭痛」のいずれかが重なるときは、緊急性の高い状態として扱うのが慎重な判断といえます2。
救急車を呼ぶか迷った時の電話相談窓口(#7119・#8000)の活用
「呼ぶほどではない気もする」と迷う段階でも、頼れる先はあります。救急電話相談の #7119 では、看護師や相談員が症状を聞き取り、救急車を呼ぶべき状況か、受診で足りるかについて助言を受けられます(実施地域や受付時間は自治体で異なるため、お住まいの市町の案内をご確認ください)1。お子様の症状なら #8000(こども医療電話相談)が利用できます。
電話の前に、①症状が始まった時刻、②めまいの性質(回転する/ふわふわする)、③しびれの部位と広がり、④持病と服用中の薬をメモしておくと、やり取りが短く済みます。地域によっては夜間休日診療の窓口案内も受けられます。症状が進んでいる、意識がもうろうとしているなど明らかに急を要する場合は、相談を待たずに119番へご連絡ください。
めまいとしびれが同時に起きる主な原因と脳・耳の症状の違い

めまいは大きく、脳(小脳・脳幹)に由来する中枢性めまいと、内耳や前庭神経に由来する末梢性めまいに分けて考えられています2。しびれを伴うかどうかは、この切り分けのヒントになります。
脳が原因で起こる「中枢性めまい」の特徴と手足のしびれ
平衡感覚の情報は内耳から脳幹・小脳へ送られ、そこで手足の運動や姿勢の制御と統合されます。脳幹には感覚を伝える神経の通り道が密集しているため、この領域に血流の問題が起きると、めまいと同時に顔や手足の感覚障害が現れることがあります。
中枢性で聞かれやすい訴えは、回転感よりも「体が傾く」「まっすぐ歩けない」といった動揺感が前面に出る、頭を動かさなくても症状が続く、片側の手足や口元のしびれ・脱力を伴う、二重に見える、飲み込みづらいなど。背景には脳梗塞や脳出血のほか、まれに脳腫瘍や脳炎などが隠れていることも知られています1。症状の組み合わせが「耳だけでは説明しにくい」と感じたら、脳側の評価を先に進める流れになります。
内耳が原因で起こる「末梢性めまい」の特徴と聞こえの異常
内耳の三半規管や前庭神経が関わるめまいでは、目が回るような強い回転性のめまいが突然始まり、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。特徴的なのは、耳の症状と一緒に現れやすいという点。片耳の詰まった感じ、耳鳴り、聞こえにくさが同じ時期に出ていれば、メニエール病や突発性難聴など内耳側の疾患を念頭に置いた診察が行われます2。寝返りや起き上がりなど、特定の頭の向きで数十秒だけ強く回る場合は、良性発作性頭位めまい症のパターンが考えられます。
末梢性のめまいでは、強い回転感があっても手足の麻痺や言語の障害を通常は伴いません。ただし、初めての激しいめまいでは末梢性か中枢性かの区別が難しい場面もあり、経過や神経所見を含めた診察が求められます。
よくある誤解:肩こりや血行不良によるしびれ・立ちくらみとの違い
「デスクワークの肩こりのせいだろう」と考えたくなる気持ちは自然なもの。とはいえ、区別しておきたい点があります。首や肩の筋緊張、手の使い過ぎに関連する神経の圧迫では、しびれが手指の特定の指だけにとどまったり、姿勢を変えると軽くなったりする傾向があります。回転性のめまいが同時に突然起こることは、あまり典型的ではありません。
また、立ち上がった瞬間に目の前が暗くなり、冷や汗や吐き気を伴って倒れそうになる感覚は「前失神」と呼ばれ、めまいとは成り立ちが異なります。血圧や心臓、脱水、服用中の薬が関わることもあり、内科的な評価が向くケースです。
整理すると、片側に偏るしびれ・言葉や視覚の異常・立てないほどのふらつきが加わるかどうかが、様子をみる判断と急ぎの受診を分ける境界線になります。当てはまる項目がなくても、症状を繰り返す、時間とともに強まるという場合は、早めに医療機関へご相談ください。
耳鼻咽喉科か脳神経外科か?症状に応じた受診先の判断基準
緊急性が高い状態でなければ、次に考えるのは「どこへ最初に行くか」でしょう。判断の軸は、しびれや麻痺などの神経症状があるか、耳の症状があるかの2点に置くと整理しやすくなります。
脳神経外科や脳神経内科を最優先で受診すべきケース
次のいずれかに当てはまるなら、脳神経外科または脳神経内科で、画像検査を含めた評価を先に受けることが勧められます。
- しびれや力の入りにくさが体の片側(手と足、顔と手など)に及ぶ
- 突然の激しい頭痛、経験のない性質の頭痛を伴う
- ろれつが回らない、言葉が出にくい、物が二重に見える
- 支えなしで立てない、歩くと一方向へ寄っていく
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動、喫煙など、血管の負担となる要因がある
受診前に電話で症状を伝え、CTやMRIの対応が可能か確認しておくとスムーズです。症状が進んでいるときは、予約を待つのではなく救急外来や119番の利用をご検討ください13。
耳鼻咽喉科での受診が適しているケースと検査(平衡機能検査など)
回転性のめまいに加えて耳鳴り・難聴・耳の詰まり感がある、頭の向きを変えたときだけ短時間強く回る、過去にも同じようなめまいを繰り返している——こうした場合は耳鼻いんこう科での評価が向いています。手足のしびれや麻痺がないと確認できていることが前提です2。
耳鼻いんこう科では、聴力検査、眼の動きを観察する検査(眼振検査)、体のバランスを数値で把握する平衡機能検査・重心動揺検査などを組み合わせ、内耳や前庭神経の関与を調べていきます。当院の院長は日本めまい平衡医学会のめまい相談医の資格を有し、獨協医科大学でめまいに関する学生講義も担当しております。当院では、内耳の三半規管や前庭神経が関わると考えられるめまいについて、問診と検査を組み合わせた評価に努めており、診察の結果から脳の精査が望ましいと判断した場合には、対応可能な医療機関へおつなぎする体制をとっています。 めまいで受診される方に向けて、院長が検査内容を解説した動画も公式サイトでご用意しています。
運転を控えるべき理由と再発時の初期対応手順
めまいやしびれが残る状態での運転は控えてください。回転感は前ぶれなく再発することがあり、ハンドル操作やとっさの判断が難しくなります。通院の際は、ご家族の送迎やタクシーの利用をご検討ください。症状が出た当日の運転は控える——車での移動が多い地域にお住まいの方にこそ、お伝えしたい点です。
症状が再び強く出たときの動き方も、あらかじめ決めておくと落ち着いて対応しやすくなります。
1. その場でしゃがみ、転倒しにくい場所へ移動して横になる
2. 顔を横に向けた横向きの姿勢をとり、吐き気があっても喉が詰まらないようにする
3. 頭や首を無理にひねらず、暗く静かな環境で目を閉じる
4. 症状が始まった時刻を確認し、家族へ連絡する
5. 神経症状が加わる、または落ち着く気配がないときは119番または#7119へ連絡する
受診時に医師へ正しく状況を伝えるためのメモ作成手順
めまいの診療では、検査結果と同じくらい問診の情報が判断を左右します。診察室では緊張して思い出しにくくなるもの。待ち時間のうちに、スマートフォンのメモへ書き出しておくとよいでしょう2。
発症時刻と「めまいの種類(ぐるぐる・ふわふわ)」の整理
まず記録したいのは、症状が始まった時刻です。脳卒中が疑われる場面では発症からの経過時間が方針に関わるため、「起床して布団から出た6時40分頃」といった具体性が役立ちます1。
続いて、めまいの性質を自分の言葉で書き留めておきます。
- 周囲や自分が回る「ぐるぐる(回転性)」か、地面が揺れる「ふわふわ(浮動性)」か
- 続いた時間は数十秒か、数分か、数時間以上か
- 寝返り・起き上がり・振り向きなど、動作との関係があるか
- 吐き気や嘔吐、冷や汗を伴ったか
表現が曖昧でも構いません。「エレベーターで下がるような感じ」といった感覚的な言い方でも、じゅうぶん手がかりになります。
しびれの範囲(片側・両手・口元など)と持続時間のメモ
しびれは、部位と広がり方を具体的に残すことが要点です。
- どこか:左手の指先だけ、左手全体、左の手と足、口元や舌、顔の片側
- 左右差:片側だけか、両側が対称か
- 感じ方:ジンジンする、触った感覚が鈍い、力が入らない
- 時間:数分で消えたのか、今も続いているのか、繰り返しているのか
一時的に消えたしびれも、必ず医師へお伝えください。 短時間でおさまった症状が、その後の判断において重要な情報になることがあります。可能なら、症状が出ている間にご自分の顔を撮影したり、家族に歩き方を動画で残してもらったりすると、診察時の説明を補えます。
既往歴・持病・服用中の薬や日常生活(運転の頻度等)の伝達
背景情報は、原因の見当をつける材料になります。高血圧、糖尿病、脂質異常症、不整脈、片頭痛、過去のめまいや難聴の経験、頭部のけがなどは漏らさず伝えましょう。血圧を下げる薬、血液をさらさらにする薬、睡眠薬、抗アレルギー薬など、服用中の薬はお薬手帳を持参いただくと伝え漏れを防ぎやすくなります。サプリメントも含めてお見せください。
あわせて、生活面の情報も判断に関わります。毎日通勤や送迎で車を運転している、階段の多い職場である、一人暮らしである——こうした事情は、経過をみる期間の過ごし方や、運転再開をいつ相談するかという話し合いに直結します。「車の運転が日常に欠かせないかどうか」は、ぜひ診察時にお聞かせいただきたい情報です。
当院は宇都宮で開業して50年以上、地域のかかりつけ医として診療を続けてまいりました。耳や平衡機能に関わるめまいのご相談から、他科での精査が望ましいと考えられる場合の橋渡しまで、状況に応じて対応を検討いたします。
よくある質問
Q. めまいとしびれが同時に起こる病気には何がありますか?
A. 脳梗塞や脳出血など脳血管に関わる状態、まれに脳腫瘍や脳炎などが挙げられます。一方で、首や肩まわりの筋緊張、手の神経の圧迫、過呼吸に伴う両手のしびれなど、脳以外の要因が重なっていることもあります。片側に偏るしびれや言葉の異常を伴うときは、急ぎの評価が必要と考えられます。
Q. めまいで救急車を呼んでもよいのでしょうか?
A. 手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、激しい頭痛、支えなしで立てないといった症状が重なるなら、119番通報をためらう必要はありません。迷う段階では、救急電話相談(#7119、実施地域・時間は自治体で異なります)へ電話し、状況を伝えて助言を受ける方法もあります。
Q. 急にひどいめまいが起きたとき、その場でどうすればよいですか?
A. まずは転倒を防ぐことを優先し、しゃがんでから横になり、顔を横に向けた姿勢で目を閉じてください。頭や首を無理に動かさず、暗く静かな場所で休みます。発症時刻を確認し、家族へ連絡を。神経症状が加わる場合やおさまる気配がない場合は、救急への連絡をご検討ください。
Q. 注意が必要なめまいは、どのような特徴がありますか?
A. めまい単独よりも、随伴症状の有無が目安になります。片側のしびれや脱力、言葉の障害、物が二重に見える、経験のない激しい頭痛、まっすぐ歩けない——こうした症状が重なるものは、急ぎの対応を検討する範囲です。耳鳴りや難聴を伴う回転性めまいは、耳鼻いんこう科での評価が向くことが多いとされています。
Q. めまいが治まったら、車の運転を再開してよいですか?
A. 自己判断での再開は控え、診察の際に運転の可否をご相談ください。めまいは前ぶれなく再発することがあり、原因がはっきりしない段階での運転は控えるのが望ましいと考えられます。通院時はご家族の送迎や公共交通機関の利用をご検討ください。
参考文献
1. 公益財団法人 日本医療機能評価機構「Minds ガイドラインライブラリ」 https://minds.jcqhc.or.jp/
2. 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 https://www.jibika.or.jp/
3. 日本外科学会 https://www.jssoc.or.jp/
昭和60年 栃木県立宇都宮高等学校 卒業
昭和60年 東京慈恵会医科大学 入学
平成3年 東京慈恵会医科大学 卒業
平成3年 第85回 医師国家試験 合格
平成3年 東京慈恵会医科大学付属病院研修医
平成5年 同上 研修終了
平成5年 東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科学講座 助手 診療医員
以後 慈恵医大附属病院(本院、第三病院、柏病院) 太田総合病院(川崎市)に勤務
平成12年~平成14年 Brandeis University Ashton Graybiel Spatial Orientation Laboratory
(ブランダイス大学Ashito Graybiel 研究室 (米国 マサチューセッツ州)へ研究留学
平成14年 留学終了帰国
以後 慈恵医大附属病院(本院, 青戸病院(現 葛飾医療センター), 柏病院)に勤務
平成15年 学位(医学博士)受領
平成16年 東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科学講座 講師
平成20年 東京慈恵会医科大学 退職
平成20年 獨協医科大学 非常勤講師
平成20年 添田耳鼻咽喉科医院 副院長
平成24年 添田耳鼻咽喉科医院 院長
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定補聴器相談医
日本めまい平衡医学会認定めまい相談医
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