
夜にお子様が耳を痛がったとき、まず落ち着いて確認したいこと
お風呂上がりや寝かしつけの直前、お子様が急に耳を押さえて泣き出す。熱はないのに機嫌が戻らず、今すぐ夜間救急へ向かうべきか、翌朝まで待てるのか——判断に迷った夜を過ごされた保護者の方は少なくありません。耳の痛みは、家庭でいくつかの点を順に見ていくだけでも、状況をある程度整理できます。 この記事では、耳の触り方やライトの当て方といった確認手順、中耳炎以外に考えられる原因、夜間受診と翌朝受診を分ける目安、家庭でできる一時的な対応までをまとめました。
この記事の要点まとめ
- 耳介を引っ張る・押すなどの触診と目視で、家庭でも状態を確認しやすくなる
- 中耳炎以外にも外耳炎や異物混入など、耳の痛みの背景は複数考えられる
- 全身状態を軸に、夜間相談が望ましい場合と翌朝受診で対応できる場合を整理できる
- お子様が耳を痛がるときに家庭で行う具体的な確認手順と観察項目
- 中耳炎だけではない?お子様が耳を痛がる主な原因と特徴
- 夜間救急か翌朝受診かの判断基準と家庭での応急処置
- 耳鼻咽喉科の受診時に医師へ伝えると診察がスムーズになる情報
お子様が耳を痛がるときに家庭で行う具体的な確認手順と観察項目

「耳が痛い」と言われても、家庭で耳の奥までのぞくことはできません。それでも、外から触れて分かること、目で見て分かることは意外と多いものです。ここでは確認していく順番を整理します。
耳介を引っ張る・耳の後ろを押す触診確認の手順
まず明るい場所で、お子様を膝に座らせるか横向きに寝かせます。片方の耳たぶ(耳介)をつまみ、後ろ上方向にごく軽く引っ張ってみてください。 ここで強く痛がって嫌がるなら、耳の入り口から鼓膜までの外耳道に炎症が起きている可能性が考えられます。逆に、引っ張ってもさほど反応がなく「奥がズキズキする」と訴える場合は、鼓膜より内側に原因がある可能性も想定されます。
続いて、耳の付け根の前側(あごの動きに合わせて動く部分)と、耳の後ろの骨の出っぱりを指の腹でそっと押します。耳の後ろを押して強く痛がる、あるいは赤く腫れて耳が前に押し出されているように見えるときは、早めのご相談が望まれる所見とされています。
コツは、痛がっている側だけでなく左右両方を同じ力で確かめること。見比べることで、反応が痛みによるものか、単に触られるのを嫌がっているだけなのかを判断しやすくなります。強く押したり引っ張り続けたりはしないでください。
耳だれ(耳漏)や耳周囲の赤み・腫れの観察ポイント
次は耳の入り口を目で観察します。スマートフォンのライトを使うなら、光が直接目に入らない位置から、斜め横に当てるようにしてください。 見るのは外耳道の入り口付近だけで十分です。
確かめたいのは、黄色や白っぽい膿のような分泌物、透明でさらさらした液体、血液が混じった液体が出ていないか。これらをまとめて耳だれ(耳漏)と呼びます。枕カバーやパジャマの襟元に湿った跡が残っていないかも、有力な手がかりになります。耳だれが出ると鼓膜にかかる圧が抜け、痛みが軽くなったように感じられることもあります。痛みが引いてもそのままにせず、受診の予定を立ててください。
あわせて、耳の周囲の皮膚が赤い、耳の下がぷっくり腫れている、耳全体が熱を持っているといった見た目の変化もメモしておきます。なお、綿棒や耳かきを差し入れて確かめるのは避けましょう。奥の耳垢を押し込んだり、傷を作ったりする一因になります。
言葉で痛みを訴えられない乳幼児が見せる特有のサイン
2歳前後までのお子様は、痛みの場所をうまく言葉にできません。だからこそ、行動の変化から読み取る必要があります。
よく見られるのは、片方の耳を何度も手でこする、耳を引っぱる、頭を左右に激しく振る、布団や保護者の肩に耳を押しつけてぐりぐりする、といった動き。横になると耳の中の圧が変わりやすいため、寝かせた途端に泣き出し、抱き起こすと落ち着くという繰り返しも、耳のトラブルを疑う手がかりのひとつとされています。
このほか、ミルクや食事の途中で急に嫌がる(飲み込む動作で耳に痛みが響くことがあるため)、呼びかけへの反応が鈍い、いつもより夜泣きが多い、といった変化にも目を向けてみてください。かぜで鼻水が続いていた時期と重なっていないかを振り返っておくと、診察の参考になります。
中耳炎だけではない?お子様が耳を痛がる主な原因と特徴
耳の痛みというと中耳炎を思い浮かべる方が多いのですが、実際の背景はいくつもあります。原因ごとの特徴を知っておくと、家庭での観察点も絞りやすくなります。
かぜ症状に続いて生じやすい急性中耳炎と滲出性中耳炎
小さなお子様の耳と鼻をつなぐ耳管は、大人より短く、太く、水平に近い形をしています。そのため鼻やのどの炎症が耳へ及びやすく、かぜをひいて数日後、鼻水が黄色く粘りけを帯びてきた頃に耳の痛みが出るという経過がよく知られています。 これが急性中耳炎で、痛みや発熱を伴い、鼓膜に穴が開いて耳だれとして出てくることもあります。
もう一方の滲出性中耳炎は、中耳に液体がたまった状態が続くもの。痛みや発熱がほとんど出にくいのが特徴です。「テレビの音量が大きくなった」「呼んでも振り向かない」「聞き返しが増えた」といった様子で気づかれることが多く、痛がらないぶん見過ごされやすいタイプといえます。急性中耳炎のあとに移行することもあるため、痛みが落ち着いても医師の指示があるうちは通院を続けてください。自己判断で中断すると、液体がたまったままの状態が長引くことがあります。
耳掃除の刺激や水遊び後に生じる外耳炎・耳垢閉塞
耳の入り口から鼓膜までの外耳道の皮膚が炎症を起こしたものが外耳道炎です。綿棒や耳かきでこすった小さな傷、プールや入浴で入った水、汗などがきっかけになるとされます。前述のとおり、耳たぶを引っ張ると強く痛がるのが特徴的な所見で、かゆみを伴うこともしばしば。
また、耳垢が奥で固まって詰まる耳垢栓塞でも、圧迫感や痛み、聞こえにくさが生じることがあります。入浴後に耳垢が水分を含んで膨らみ、急に詰まった感じが出るケースも見受けられます。家庭で無理に取ろうとすると、かえって奥へ押し込んでしまうことがあるため、耳鼻いんこう科での処置をご検討ください。
小さなおもちゃの異物混入や耳下腺の腫れによる痛み
幼児期には、ビーズやBB弾、ティッシュのかけら、シールなどを耳に入れてしまうことがあります。本人が言い出せず、数日後に痛みや耳だれで気づく場合も。鼻に異物を入れたときも、片側だけの鼻づまりや強いにおいのある鼻水として現れ、耳の違和感として訴えることがあります。いずれも家庭でピンセットを使うのは避け、専門的な器具のある医療機関へご相談ください。
そのほか、耳の下からあごにかけての腫れを「耳が痛い」と表現することもあります。流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)や反復性耳下腺炎、リンパ節の腫れなどが背景にあるケースです。腫れているのは耳の穴なのか、耳の下のふくらみなのか、触って確かめておくと診察の際に役立ちます。
夜間救急か翌朝受診かの判断基準と家庭での応急処置

夜間にもっとも悩ましいのが、「今すぐ」なのか「明日の朝」なのかという点でしょう。耳そのものより全身の状態を軸に考えると、道筋が立てやすくなります。
すぐに夜間救急の受診を考慮すべき症状
次のような様子が見られるときは、時間帯を問わず医療機関へご連絡いただくことをおすすめします。
- 高い熱があり、呼びかけへの反応が鈍い、ぐったりして視線が合わない
- 水分をまったく受け付けず、半日以上おしっこが出ていない
- 繰り返す嘔吐や、けいれんが見られる
- 耳の後ろが赤く腫れ、耳が前方に押し出されているように見える
- 顔の表情に左右差がある、口角が片方だけ下がる
- 強いめまいでまっすぐ座っていられない、ふらついて歩けない
- 頭部を打ったあとに耳の痛みや出血が出てきた
いずれも、耳だけの問題にとどまらない可能性を示す徴候とされています。栃木県こども救急電話相談(#8000)など、地域の相談窓口へ電話して指示を仰ぐ方法もあります。
翌朝の耳鼻咽喉科受診まで様子を見られる状態の目安
一方、痛みを訴えてはいても次のような状態であれば、翌朝に耳鼻いんこう科を受診する形で対応できる場合が多いと考えられます。
- 抱っこやあやしで機嫌が戻る時間帯がある
- 水分やミルクが摂れている
- 熱がない、または微熱程度で顔色が保たれている
- 痛みが波のように寄せては引き、間に眠れている
- 耳だれは出ているが、全身状態は落ち着いている
耳だれが出た場合も、全身の様子が保たれていれば、夜のうちは清潔なガーゼで外に流れ出た分をやさしく拭き取り、翌朝の受診で差し支えないことが多いとされます。耳の中に脱脂綿を詰め込む、市販の点耳薬を自己判断で使う、といった対応は控えてください。
冷却や手持ちの解熱鎮痛薬の活用手順
夜間の痛みをやわらげる方法として、まず冷却が挙げられます。保冷剤をタオルで包み、耳の周囲や耳の後ろに数分ずつ当てると、楽に感じられるお子様もいます。凍傷を避けるため、直接肌に当てず、時間を区切って行ってください。入浴で体が温まると痛みが強まることがあるので、その晩は湯船を控えてシャワー程度にとどめる方法もあります。頭を少し高くして寝かせると、耳の中の圧が変化して過ごしやすくなる場合もあります。
痛みが強いときは、以前に小児科などで処方され、まだ使用期限内かつお子様の現在の体重に合った用量のアセトアミノフェン製剤(解熱鎮痛薬)が手元にあれば、指示された用量・間隔を守って使うという選択肢もあります。市販薬を新たに使うなら、対象年齢と用量を必ず確かめ、迷うときは薬剤師や相談窓口へ問い合わせましょう。鎮痛薬は痛みを一時的にやわらげる目的のもので、原因そのものへの対処ではありません。服用した時刻と量は、翌日の診察で伝えられるようメモに残しておくと役立ちます。
耳鼻咽喉科の受診時に医師へ伝えると診察がスムーズになる情報
診察の時間は限られていますが、情報が整理されていれば、医師はより多くの手がかりを得られます。夜のうちにスマートフォンのメモへ書き留めておくとよいでしょう。
痛みの経過・鼻水の有無・家庭での対処内容のメモ
お伝えいただきたいのは、おおむね次の項目です。いつから痛がり始めたか、左右どちらの耳か、痛みは続いているのか波があるのか。かぜや鼻水はいつ頃からか、鼻水の色や量に変化はあるか。発熱の有無と最高体温、食欲や睡眠の様子。耳だれや腫れの有無。そして、解熱鎮痛薬を使った場合は薬の名前・服用時刻・量を必ず控えておいてください。 保育園や幼稚園での流行状況、プールや水遊びの有無、耳掃除をしたかどうかも、原因を絞り込む材料になります。
耳だれが付いたガーゼをお持ちいただくと、性状を確認できる場合もあります。過去に中耳炎を繰り返している、薬でじんましんが出たことがある、といった情報も忘れずにお知らせください。
宇都宮市の添田耳鼻咽喉科医院における小児の耳・鼻の診療
当院は昭和47年の開院以来、宇都宮の地で50年以上にわたり、地域のかかりつけ医として診療を続けてまいりました。院長は「来てよかった耳鼻咽喉科」といわれる診療を心掛けており、小さなお子様の場合は、耳の中の観察や鼻の処置をその日の様子に合わせて無理のない形で進めるよう努めています。過去の受診で強く泣いてしまった経験があるお子様も、その旨をお伝えいただければ、進め方をご相談しながら対応いたします。
また当院では、注射器を使わないアレルギー検査「ドロップスクリーン」も導入しています(小学生以上が対象、1日の実施人数に限りがあるためご予約時にお申し出ください)。鼻水が長引きやすいお子様では、背景にアレルギーが関わっていることもあり、耳と鼻を一続きのものとして診ていく視点を大切にしています。WEB予約は1週間前から受け付けていますので、翌朝の受診をお考えの際はご活用ください。
よくある質問
Q1. 子供が中耳炎かどうか、家庭でチェックする方法はありますか?
A. 家庭で診断を確定することはできませんが、手がかりになる観察点はあります。かぜや鼻水が数日続いていたか、耳を頻繁に触ったり頭を振ったりしていないか、横になると泣き出さないか、耳だれが出ていないか、発熱や機嫌の変化はないか。耳たぶを引っ張って強く痛がるなら外耳道の炎症、引っ張っても変わらず奥の痛みを訴えるなら鼓膜より内側が関係している可能性が考えられます。最終的な判断は、鼓膜を直接観察できる医療機関で行われます。
Q2. 耳が痛いというだけでも受診したほうがよいのでしょうか?
A. 耳の痛みには中耳炎以外にも複数の原因があり、外から見ただけでは見分けにくいものです。全身状態が落ち着いていれば急いで夜間に向かわなくてよい場合も多いのですが、痛みが続く、繰り返す、聞こえ方が気になるといったときは、日中の診療時間内に耳鼻いんこう科へご相談いただくことをおすすめします。
Q3. 子供が耳を痛がったまま様子を見ていると、どうなりますか?
A. 経過は原因や個人差によって大きく異なります。自然に落ち着くこともありますし、痛みが強まったり、聞こえにくさが長引いたりすることもあります。特に滲出性中耳炎は痛みが乏しいまま経過する場合があるため、痛みが引いたことだけを理由に通院を中断せず、医師の指示に沿って経過をみていくことが大切です。
Q4. 小さな子供の中耳炎は気づかれにくいと聞きますが本当ですか?
A. 言葉で痛みを説明できない年齢では、不機嫌や夜泣き、耳を触る仕草といった間接的なサインとして現れるため、気づくのが遅れることがあります。滲出性中耳炎はとくに痛みも発熱も目立たず、「呼んでも反応が薄い」「テレビの音が大きい」といった様子で見つかるケースも少なくありません。かぜのあとに聞こえ方の変化を感じたら、一度ご相談ください。
Q5. 中耳炎を繰り返す場合、どんな点に気をつければよいですか?
A. 鼻の状態が耳に影響しやすいため、鼻水をためないことが基本になります。まだ自分で鼻をかめないお子様には、片方ずつ押さえて「ふん」と出す練習を遊びの中に取り入れたり、家庭用の吸引器を使ったりする方法があります。集団保育、受動喫煙、アレルギー性鼻炎なども関わることがあるため、繰り返す場合は背景要因も含めて医師とご相談ください。
昭和60年 栃木県立宇都宮高等学校 卒業
昭和60年 東京慈恵会医科大学 入学
平成3年 東京慈恵会医科大学 卒業
平成3年 第85回 医師国家試験 合格
平成3年 東京慈恵会医科大学付属病院研修医
平成5年 同上 研修終了
平成5年 東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科学講座 助手 診療医員
以後 慈恵医大附属病院(本院、第三病院、柏病院) 太田総合病院(川崎市)に勤務
平成12年~平成14年 Brandeis University Ashton Graybiel Spatial Orientation Laboratory
(ブランダイス大学Ashito Graybiel 研究室 (米国 マサチューセッツ州)へ研究留学
平成14年 留学終了帰国
以後 慈恵医大附属病院(本院, 青戸病院(現 葛飾医療センター), 柏病院)に勤務
平成15年 学位(医学博士)受領
平成16年 東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科学講座 講師
平成20年 東京慈恵会医科大学 退職
平成20年 獨協医科大学 非常勤講師
平成20年 添田耳鼻咽喉科医院 副院長
平成24年 添田耳鼻咽喉科医院 院長
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定補聴器相談医
日本めまい平衡医学会認定めまい相談医
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